リバイバル・ジャパン|キリスト教の総合情報雑誌
地引網出版
連 載

被災地の「現場」へ

本誌編集長 谷口和一郎

東日本大震災から約1年が経とうとする今、忘れないうちに取材に赴いた当時のことを書き記しておこうと思う。3月15日に東京を発ち、被災地には16日に入った。まさに神に守られ、導かれた取材だった。しかし今考えると、もっと取材できたのではないか、との思いもある。クリスチャンの記者として、信仰と弱さ、心の葛藤も含めて書いてみたい。今後の被災地報道の一助になればと願いつつ。

被災地の「現場」へ

第1回 下版日の地震発生

東日本の誰もが覚えているあの日、あの時、私は東京都日野市にある地引網出版の事務所2階で、『リバイバルジャパン』の下版作業をしていた。記事を書き上げ、印刷会社に送ってしまう仕事だ。

ガタガタガタッ。「おぉ、大きいな。でもすぐに終わるだろう…」そう思っていると、プレハブ構造の社屋が左右に揺れ始めた。揺れはいっこうに止まず、激しくなる一方だった。階下では二人のスタッフが作業をしている。慌てて「上に上がってきなさーい!」と声を掛け、すぐに上がってきた彼女たちと大声で祈り続けた。

しばらくして、ようやく揺れは収まった。倉庫となっている一階に降りてみると、積み上げた本の山は無事。ホッと一安心。ただ、いったいどこが震源地だったのだろう。会社にテレビはないので、携帯電話のワンセグ放送を見てみると、三陸沖が震源で、津波の被害が出始めているようだった。

しかし、今の私が集中すべきことは、目の前の下版作業だった。とにかくこれを終わらせなければ、次の行動に移れない。そう自分に言い聞かせて仕事に集中した。

夜になり、気仙沼市街が燃えている映像がインターネットから流れてきた。『ケセン語訳 聖書』を書いたカトリック信者の山浦玄嗣さんのことが心に浮かんだ。この火災の下で、どれほどの人が亡くなっているのだろうか…。

その頃、東京23区内では帰宅難民が溢れていた。あらゆる交通機関がストップし、会社員らが自宅に帰れなくなっていた。弊社は2009年12月に中野区から日野市に移転していたので、震災によって業務が滞るということはほとんどなかった。ただ、本誌の組版・印刷をしてくれているプレイズ出版の東京事務所が23区内にあり、スタッフの方が「もう帰っていいですか?」と聞いてこられた。私は非情にも「帰ってもらっては困ります」と応じたが、都内はそれだけ緊迫した状態だったのだ。

自宅に帰ってみると、福島第一原子力発電所が深刻な事態になっていることが分かった。2009年の春に福島第一聖書バプテスト教会を取材したことが想い出された。その際、佐藤彰牧師が海沿いの小高い丘にある公園に連れて行って下さり、「あの向こうに見えるのが福島第一原発です。ここから東京に電力が送られているのです。」と解説して下さった。まさにあの場所が、放射能漏れの危機に瀕しているのだった。

作成していた『リバイバルジャパン4月3日号』(3月20日発売)は、翌12日(土)の午後になんとか下版することができた。そしてその日の午後3時36分、福島第一原発の1号機が爆発した。水素爆発ということだったが、これで一気に日本中の危機感が高まった。東京でも、食料やガソリンが無くなり始めた。

次の号の下版は、3月25日だった。記者一人(当時)という状況にあっては、それまでの間に取材に行き、無事帰着し、記事を書き上げなければならない。また、それ以外の記事・連載の編集も考えると、3月13日(日)から始まる週に現地に行って、帰ってこなければならない。果たして行けるだろうか…。

それでも、どうしても現地に入りたかった。阪神・淡路大震災の時、私は大阪に住んでいたのだが、ほとんど何のボランティア活動もせず、翌月には東京に引っ越していたからだ。東京行きはその数ヶ月前に決めていたことで、何ら罪責感を持つことではないのだが、なぜかずっとそのことが心に引っかかっていた。

そして記者となった今、被災地に入るのは当たり前のことであったし、もし行かなければ、あの時以上の後悔をするだろうと感じた。神にある使命感、と言うより、そんな人間的な思いも強かった。そして13日の家庭礼拝で、「明日、お父さんは被災地に行くから」と発表した。妻の顔が一気に曇った。

(次号につづく)

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