リバイバル・ジャパン|キリスト教の総合情報雑誌
地引網出版

リバイバルジャパン取材日誌

男の格、日本の品格

更新日:2010年7月22日

私が子供の頃、故郷において、男の格は素潜りでアワビやサザエがたくさん取れる、大きなチヌが釣れる、罠で野鳥が捕れる、などによって決まった。勉強ができるとか、足が速いとかよりも、それら獲物を捕ることで大きな才能を発揮する男子は尊敬された。私は、素潜りは苦手で、釣りと野鳥捕獲が若干得意ではあったが、考えられないほど素潜りが得意な友人には、正直「人間として負けている」と思っていた。

またそれが、女子にもてる要素だと男子たちは自覚していた。小学校の臨海学校の時などは、誰に言われなくても素潜りを競って貝を捕ってきた。私は、素潜りでは勝負にならないので、魚をつくヤスを持参し、オコゼを突いて班の子たちに振る舞った。

その臨海学校はワイルドで、女子にも、弁当に生のナスを一本持ってきて、そのまま塩をふってかぶりつく猛者もいた。キュウリではない。あのぶっといナスである。彼女は、自分の子供たちにもナスを一本持たせているのだろうか。 「アケミ、それはお前の代でやめとけ。」

大阪では、男の格は笑いを取れるかどうかで決まるようだ。どんなに勉強ができても、どんなにアワビを捕るのが得意でも、笑いを取ることができない男は尊敬されない。だから必死で笑いの芸を磨く。

東京の男の子たちは、サッカーと勉強だろうか。

男は格付けが好きである、というより、いつも格付けを気にしている。就職すれば、ポストと年収だ。

教会の中にも、何らかの格付けが存在する。それがまた、自分の存在価値を脅かす。牧師の存在価値を脅かす。

クリスチャンも、何か語り合っていると、「ああ、この人はこれを自慢したいんだな」と分かることがある。以前、自分がいかにメッセージが上手いかを語ってくる若い牧師がいた。 自分が語ると会衆が泣くんだと。才能や影響力や、そういったものを明け透けに、またさり気なく伝えたい。それが男の性(さが)でもある。しかし、途端に会話がつまらなくなる。

思うに、土台となる「共通の価値観」と、才能(賜物)に応じた「多様な価値観」の重要度の差(それは非常に大きい)が分かると、自分の心が安定してくるのだろう。そして、人を尊敬できるようにもなる。自分の居場所と追求する分野が見つかり、人生も楽しくなる。

キリストを信じるというのは、その共通の価値観に出会えるということだ。アワビが捕れなくても(しつこい!)、勉強ができなくても、足が遅くても、絵が下手でも、楽しく充実して生きられるということだ。

私はまだ、愛とか心の広さ・強さなどといった共通の価値観に立ち切れていない。頭では分かっていても、心の座りが悪い。すると、これを極めた(極めつつある)、というものがないこともあって、時に自分が何者でもないように思える。人の才能をうらやむこともある。

ただ、この本を読んで、自分が集中すべきものがおぼろげに見えてきた。『雨降りの心理学』(藤掛明著)という不思議なタイトルの本だ。特に、最後の章「雨あがる」の分析が心にとまった。主人公の、出世と安定を求める自分と自由に楽しく暮らしたい自分という二つの心が「統合」される物語。

それぞれ、人によって統合されるべきものは異なるのだろうが、自分の中にある分裂した思いが、ゆっくりと統合されていくとき、外的な状況も変化を遂げるという。まるで、雨があがるように。これは、心の中のことであると同時に、人間の人生に神が介入される物語でもある。藤掛氏は、神という言葉を使わずに、そのことを説明している。

話は飛ぶが、明治維新後、特に戦後の日本は、米国にすり寄る「親米」と、米国を嫌悪する「反米」に分裂してきた。岸田秀や内田樹の指摘するところだ。自民党が親米を担い、社会党が反米を担ってきたのが55年体制。「鬼畜米英」と言ってみたり、「米国型民主主義は素晴らしい」と言ってみたり。分裂症患者のように両極端に振れる。

日本は今後、その親米と反米が統合される道を求めていくべきだと思う。沖縄の基地問題も、この心の状況を解決することが大切だ。まずはそういった病理がこの国に存在し、自分の中にも存在することを認める。日本の品格とやらも、そこから生まれてくるはずだ。

そして、そこに神は介入され、閉塞感をもたらす雨は上がり、見晴らしのいい新たな日本の物語が始まる。

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