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キリスト教雑誌 舟の右側
特 集 2

シーサイドバイブルチャペル 内藤智裕牧師

会堂は流されたが教会は無事だった

瓦礫の中に立つ十字架が復興のシンボルにもなっているシーサイドバイブルチャペル(内藤智裕牧師)。仙台市宮城野区にあったその教会は、津波で全てが流されてしまった。そして今、新たなスタートが切られている。

 シーサイドバイブルチャペル 内藤智裕牧師

「ただ事ではない!」

その日は教会で週報をつくっていた。作り終えてホッとしたところに、急激な揺れが襲った。古い家を購入してリフォームした教会堂兼牧師館は揺れに揺れた。長い揺れが終わって外に出てみると、屋根瓦の一部が落ちていた。シーサイドバイブルチャペルと言うぐらいだから海にほど近い。しかし、津波の心配は全くしていなかった。隣のおじいさんも、「ここは津波なんて来ないから大丈夫だ」と言っていた。

その頃、妻のぞみさんは街で買い物をしていた。携帯電話のワンセグでテレビ映像を見ていると、津波が迫っていることが分かった。「家にはお父さんがいる!」逃げる車で渋滞する反対車線を尻目に、海側に向かって車を飛ばした。ほどなく教会に到着。家にはテレビがないため、内藤牧師は地震で落ちたものの片付けをしていた。

念のためにと車に乗り、今度は内藤氏が運転して川沿いの道を走った。すぐ近くの中野小学校には、避難する人々が集まってきていた。川を見ると、小さな第一波が来ていたが、「ああ、これぐらいなら」と思いながら次女の麗名さんが住むアパートを目指した。

アパートに着いてみると、麗名さんは既に逃げていた。そこで、さらに内陸を目指そうとしたところ、車が混んでなかなか前に進めなくなった。仕方なく、北に行くことをあきらめ、西に進路を取って田んぼ沿いの道に出た。すると、海岸から3?4?も離れた田んぼに、黒い津波がゆっくりと進入してきていた。

「これはただ事ではない!」心臓の鼓動が早くなった。慌ててUターンし、元の道に戻り、カーチェイスのように、乗り捨てられた車を次々によけながら逃げに逃げた。なんとか高台に辿り着いた。

その頃、津波は教会を完全に呑み込んでいた。そして屋上に600人ほどが避難している中野小学校に迫っていた。校長先生は、仙台市内のペンテコステ派の教会に通うクリスチャン。津波は巨大な壁のように迫り、小学校の屋上も全て呑み込もうとしていた。しかし、波は教会近くのゴミ処理施設にぶつかって形が崩れ、半分ほどの高さになった。600人の命は守られた。

内藤牧師夫妻は、2人の娘さんと長男の安全を確認した後、臨時避難所となっている太白市役所に身を寄せた。トイレも使えるし、電気もついていた。夜に麗名さんが合流し、朝に長男の野亜君が到着した。長女の愛実さんは、勤務先の育児所で寝泊まりするかたちになった。

その後、小学校での避難所生活を5日間送る。仙台市内は救援物資もいち早く到着し、最初の夜はワカメご飯。バナナも大量に余っていた。さらに、多賀城市にある、のぞみさんの親戚の家に身を寄せた後、野亜君が不動産屋に行って見つけてきた1Kのアパートに入ることが出来た。

新しい礼拝堂

いち早く支援の手を差し伸べてくれたのは、愛知県にある新城教会(滝元順牧師)。食料などと共にガソリンを40リットル、携行缶で持ってきてくれた。「あのときはガソリンが一番必要だった。本当に嬉しかった。一生忘れない」と内藤氏。ガソリンを満タンにした車で教会員の安否確認に走ると、全員無事だった。家の被害もなかった。

礼拝は、3月27日(日)、1Kのアパートで、午前の部と午後の部に分けて礼拝した。30人ほどの教会員は、再会を喜び、お互いに話したくてたまらない様子だった。

しかし、思いっ切り賛美できる礼拝堂が欲しい。そこで、野亜君がインターネットで調べたところ、元喫茶店の物件が見つかった。ただ、少し値段が高く、申し込みを躊躇した。

野亜君は、この被災地の教会でどのような活動をしていきたいのか、それを一つのレポートにして、宣教師たちを中心とする援助団体クラッシュジャパンにプレゼンテーションに行った。彼らの支援を得ながら、教会の建て直しを図ろうとしたのだ。

そしてある朝、のぞみさんの心に「今日、契約に行かなくちゃ」という思いが与えられ、内藤氏もそれに同意し、不動産屋に行った。お金のあては無かったが、契約した。実は、次の日に別の人が同じ物件の契約を申し込み、一日の差で契約が成立したのだという。「私にはそういう思いが来るんですよ。人間的なものですけどね」と、のぞみさんは笑う。

その後、クラッシュジャパンが、その建物の2階をサブベースとして使用してくれることが決まり、1年間の資金提供を申し出てくれた。敷金と礼金も払ってくれた。野亜君の描いていたイメージと、クラッシュジャパンが描いていたイメージが、見事に一致したのだ。「最初に宣教のイメージが来て、その後でこの物件が来ました。見たときには鳥肌が立ちました」と、のぞみさん。

(続きは本誌で)

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