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レポート

「ハマスの息子」が記者会見

イスラム世界の現実を伝える
パレスチナのイスラム原理主義組織「ハマス」の創設者シェイク・ハッサン・ユーセフの長男として生まれたモサブ・ハッサン・ユーセフ氏(34)。イスラエルで自爆テロが頻発した2000年前後、ハマス内部にいながらイスラエルの諜報機関シン・べトに協力して多くのテロを防ぎ、さらにはイスラム教徒からイエス・キリストを信じる者になるという極めて特殊な経歴を持つ。その経緯を記した自伝『ハマスの息子』(邦訳は幻冬舎から)は世界のベストセラーとなっている。今年6月14日、そのユーセフ氏が、2007年にアメリカへ亡命して以来初めてとなるイスラエルへの一時?帰国?を果たした。なぜ今帰ってきたのか。そのメッセージは何か。記者会見での彼の発言を紹介する。(エルサレム=石堂ゆみ)

「ハマスの息子」が記者会見

大きく変化した表情

記者会見場に入ってきたユーセフ氏は、しっかりした体つきながら意外に小柄だった。きちんとしたスーツに身を包み、ヨルダン川西岸地区で諜報活動をしていた時とは全く違う印象になっていた。驚きは、その表情だった。2007年にアメリカへ亡命したときとは別人かと思うほど、穏やかで真っ直ぐな笑顔になっていた。厳しい話になると、時々“ハマス”の顔に戻るのだが、計算のない理路整然とした回答からは、彼が真実を語っているという印象を受けた。記者会見には、イスラエル諜報機関シン・ベトの元同僚イツハク・ゴネン氏と、イスラエル人(ユダヤ人)でハリウッドの映画監督サム・フューエル氏を同伴していた。

――どういう経緯でイスラエルに協力するようになったのか。

ユーセフ 私の最初の疑問は、「もしハマスの目指していることが実現したらどうなるのか?」ということだった。もしハマスが西岸地区を制圧したら? もし今、イスラエルが消えてハマスがすべてを支配するようになったら? 答えは明確だった。ハマスは、ガザでパレスチナ人を20階から生きたまま突き落とすような団体だ。それがハマスの文化だ。それがイスラムの文化なのだ。私は人として、この事実を無視できなかった。同胞を裏切ったことで「選択を誤った」と言われたとしても、人の命を救うことが間違いだということがあり得るだろうか(あり得ない)、と思った。それでイスラエルの治安組織に協力したのだが、私はそのために、自分の文化、アイデンティティ、それらすべてを犠牲にしなければならなかった。しかし私は、自分のしてきたことに誇りをもっている。もし、また同じ事をするように言われるなら、そして私にその力があるなら、私は喜んで同じことをするだろう。

――あなたはイスラエルの人々の命を助けたと言うが、イスラエル兵に殺されているパレスチナ人についてはどう思うのか。

ユーセフ シン・ベト(イスラエルの諜報機関)から、イスラエル人だけをテロから守るようにと指示されたことはない。テロリストには、子供であろうが老人であろうが関係ない。テロでいったい何人のアラブ人が死んだか知っておられるだろうか? また外国人は? 私たちの働きでは、アラブ人、イスラエル人という区別はなかった。実際、私たちがテロを防いだことは、パレスチナ人のためにも良いことだった。今、中東和平が頓挫している背景を見れば、ハマスと過激派たちが犯したテロと、それに協力したパレスチナ自治政府(PA)が原因であることは明らかだ。こう言うとイスラエルのプロパガンダに聞こえるかもしれないが、これは事実だ。一方(パレスチナ側)は子供たちを死に追いやり(自爆)、一方(イスラエル側)は、テロリスト自身と他者を滅ぼそうとする行為を防ごうとしていたのだ。

私は、パレスチナ人には国よりもまず基本的人権が必要だと思っている。パレスチナ人も、知識を得て自由のために戦い、女性を尊重し、個人の自由を尊重し、宗教の自由を認めることができるはずだ。もしそれができれば、世界はパレスチナを隣人として認め、国を立ち上げることもできるだろう。しかし、今のままなら無理だと思う。今、パレスチナ自治政府にどれだけのユダヤ組織が登録されているのか。一つもない。しかしイスラエルでは、急進派のイスラム組織ですら国に登録され、法律で保護されている。私が言いたいのはこの点だ。

イスラムの本質について

ユーセフ 今、私はハマスについて証言しているが、ちょうど昨日、エジプトでムスリム同胞団(イスラム原理主義組織)から大統領が選出された。ハマスは、エジプトのムスリム同胞団から出てきた組織。つまり今回、エジプトもハマスと同じようにイスラエルに敵対する者になったということだ。ムスリム同胞団は今、世界的に一致しようとしている。ヨルダン、シリア、ガザ(ハマス)、ヨルダン川西岸地区、チュニジア、リビア、モロッコなど、ムスリム同胞団のメンバーは世界に百万人以上もいる。一致に成功すれば、世界一大きなイスラム勢力になる。もしこのまま放置するなら、テロはさらに増え、過激な活動家が増え、人類全体に害を及ぼすようになるだろう。

イスラムは、平和をもたらす宗教ではない。イスラムは戦いの宗教だ。預言者ムハンマドは、イスラム教の発展のためには殺人も奨励していた。また彼は、9歳の少女と結婚していた。もしこれが模範にすべき指導者の生き方だとしたら、平和の宗教だとどうして言えるだろうか。しかしほとんどのイスラム教徒は、こうした本質を知らないでいる。イスラム教徒は、ムハンマドを実際の彼自身よりも聖人だと思い込んでいるようだ。たとえそれが間違いだと分かっても、何も言わない。こうしてイスラムの本当の姿は(創始以来)1400年近くも隠されたまま、多くの人々を完全に支配してきたのだ。

私は、彼らに対してイスラムの本質を説得することは不可能だとの結論に至った。では、どうしたらこの本質を知らせることができるのか。それは、その創始者で預言者であるムハンマドと彼の歩みを明らかにすることだと思った。世界には大きな影響を及ぼした指導者たちの映画がたくさんある。しかしただ一人だけ、だれも触れることのできない、だれも彼をカメラに納めることのできない、絵に描くことすら許されない指導者がいる。それがムハンマドだ。私たちは今、映画「ムハンマド」のために働いている。そのことを今日、ここエルサレムで、あの神殿の丘のすぐそばで発表させていただく。

(続きは本誌で。)

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