リバイバルジャパン取材日誌
「父」のいない時代の宣教
第5回日本伝道会議のテーマは「危機の時代における宣教協力」。様々なシンポジウム、分科会で危機が叫ばれ、現状の分析と今後の方向性が話し合われた。弊誌が取材した「教会・教団間協力」のプロジェクトにおいても、クリスチャン新聞の前編集長がアンケートを元に、多くの教会が閉塞感を感じ、危機的な状況にあると強く訴えていた。
私は、「危機の時代? 現代が危機なら明治初期や戦前・戦中はどう表現すればいいんだ」と思いつつ、「では、なぜこの危機的な状況が生じたのか? その起源はいつに求められるのか? 70年代は「羽ばたく福音派」と言っていたではないか?」などの疑問が生じてきた。そして、この大会に合わせて出版された『日本開国とプロテスタント宣教一五〇年』(いのちのことば社)を読んで、少し考えた。
まず、同書の中に収められた論文「日本プロテスタントと松江バンド」(工藤弘雄)を読み、福音派の成長というのは、その源流をバックストンの松江バンドに求めることができ、今その霊的遺産が尽きかけているのではないか、と感じた。 その意味では危機的と言える。
英国人宣教師バックストンは1890年(明治23年)に来日し、欧米のどの教派にも属さない日本独自の教会形成を目指した。福音主義に立ち、「きよめ」を強調し、果敢な伝道を展開した。松江バンドは、河辺貞吉らのフリー・メソジストの流れ、中田重治らのホーリネスの流れ、そしてバックストン、ウィルクスらが直に起こした日本伝道隊の流れに拡大する。
日本伝道隊は、伝道館を設置しての歓楽街伝道、聖書学校、教師派遣、聖会開催、文書伝道を5つの柱とし、そこから沢村五郎、柘植不知人、小島伊助、安藤仲市、中島彰らが育つ。また、舟喜順一、羽鳥明、本田弘慈らもこの流れに属する。沢村五郎が校長を務めた塩谷の関西聖書神学校からは、数多くの福音派の牧師が輩出された。また、「活水の群」を起こした柘植不知人は、長野の飯田でリバイバルを体験し、癒しの伝道者として活躍した。
バックストンはまさに、聖書で言う「使徒」のような存在で、日本宣教において大きな足跡を残した。そして、このバックストンの影響を受けた世代がまだ現役で頑張っていたのが80年代中頃まで。その後、福音派から霊的指導者が生まれることなく、今日に至っている。「父」を嫌うポストモダンの波に、日本の教会も洗われているのだ。「父」から情報(教え)のみを収奪し、本質を受け継ごうとしない「子たち」が、その霊的遺産を食いつぶしていく、と言ったら言い過ぎか。
しかし、伝道の進展というのは、その宣教戦略を日本規模で考え、実行に移せる人物が必要である。各牧師が、地域にどう伝道をするかという視点(虫の目)も重要だが、大きなビジョンと包括的な視点(鳥の目)を持った指導者の重要性を再確認しなければならない。ザビエル、クラーク、バックストン。一人の霊的人間は、その国の宣教を変えることができる。会議は無駄ではないし、今回の伝道会議も大きな収穫があったと思うが、同時に我々は、「人」を育てなければならない。
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